
シンプルで力強い文体。経験した者だからこそ書ける、人間の限界、米ソの冷戦に絡んだ政治的な壁、金銭的な困難、などなどに挑戦し続けながら、世界各地の難関を泳ぎ歩いたその時々の心と体の動き、自然の驚異と美の表現、にはぐいぐい引き込まれます。狂気にもちかいほどの執念で、さまざまな困難を乗り切って、自分の打ちたてた夢をかなえ、また次の海へ、と挑戦を続ける情熱にはなにか刺激を受けるものがあります。なんだか彼女と一緒に、泳ぎ渡っているような気さえしてきます。
そして、勇気。自分の泳ぎで、世界を変えたい、という情熱。何度でも、ひたむきに、実現するまで、トライし続ける限り、失敗にはならない、あきらめた時点で、それは失敗、終点、となるのだなあということ。成功する、とは何か、についても考えさせられます。私の好きなシーンは、彼女が8歳のころ、雹の降り落ちる屋外プールでひとり泳いだ際、「私にはこれだ!」思ったその瞬間の気持ちをとてもよく表現した、弾むような一節。力が湧いてくる本です。
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